RELEASE NOTE

Scope 2 を、2 つの基準でロケーション基準・マーケット基準の算定と、排出係数の年度・変更履歴の管理

10 月 18〜19 日に、排出係数まわりの変更をまとめて取り込みました。中心は Scope 2 の 2 つの基準への対応です。あわせて、どの係数で、いつ、何を算定したのかを後から説明できるよう、係数の「年度」と「履歴」の扱いを見直しました。

  • Scope 2
  • 排出係数
  • IDEA
  • 監査対応
Scope 分析の画面。Scope 別構成の下に「Scope 2 算定基準別」のカードがあり、ロケーション基準とマーケット基準の値が並ぶ

この版のポイント

  1. Scope 2 をロケーション基準とマーケット基準で別々に算定し、根拠(契約メニュー/代替値で補完)とともに表示
  2. カスタム係数の値を変えると、算定済みの件数を示したうえで再算定するかを選べる。変更履歴も残る
  3. IDEA の版を算定年度ごとに割り当て、過年度を当時の版で算定し続けられる
  4. 過年度の公式排出係数を、各導入先がコードを変えずに登録できる

01NEW

Scope 2 を、ロケーション基準とマーケット基準で

GHG プロトコルの Scope 2 ガイダンスは、購入した電気などの排出量を 2 つの基準で報告することを求めています。地域の系統の平均的な係数で算定するロケーション基準と、契約している電力メニューの係数で算定するマーケット基準です。これまでの OpenGreenTrack は、温対法の係数区分に基づく 1 つの値だけを出していました。

入力電気の活動量(kWh)

拠点・対象年月・選んだ供給事業者とメニュー

ロケーション基準

根拠:grid_average公式の標準係数

現在の収録では全国の代替値(系統平均の代わり)を自動で使う

マーケット基準

供給事業者とメニューを選んだか
選んだ → contract_menuそのメニューの係数

選択が契約情報の登録になる

選ばない → grid_fallback全国の代替値で補完

残差ミックスが公表されていないため

2 つの値は、温対法の係数区分による Scope 2 とは別に保存し、Scope 分析の「Scope 2 算定基準別」に並べる。年度内の明細がそろうまでは「未算定」

図解1 件の電気の活動量から、2 つの基準の値を別々に算定します。マーケット基準は、供給事業者とメニューを選んだかどうかで根拠が分かれます。
算定の規則(docs/calculation-logic.md §4)
基準適用する係数根拠の種類
ロケーション基準公式の標準係数(現在の収録では全国の代替値=系統平均の代わり)grid_average
マーケット基準(契約あり)データ入力で明示的に選んだ供給事業者のメニュー別係数contract_menu
マーケット基準(契約なし)全国の代替値で補完(日本では残差ミックスが公表されていないため)grid_fallback
Scope 2 算定基準別のカード。ロケーション基準 4,694.758 t-CO2e、マーケット基準 4,674.686 t-CO2e で、マーケット基準には契約メニュー根拠 82.264 と代替値補完 4,592.422 の内訳が出ている
マーケット基準には、契約メニューを根拠にした分と、代替値で補完した分の内訳が出ます。例では東京本社の 9 月分(182,000 kWh)に東京電力エナジーパートナーの残差メニュー(0.000452 t-CO2/kWh)を選び、82.264 t-CO2e が契約根拠になっています。

STEPS基準別の値を出す

  1. 電気の活動量で、供給事業者とメニューを選ぶ

    データ入力でカテゴリ「電気」を選び、「供給事業者」と「メニュー / 供給区域」を選んで保存します。この選択が、マーケット基準の契約情報の登録になります。選ばなかった分は全国の代替値で補完されます。

  2. 算定を実行する

    保存すると算定が走り、基準別の値も記録されます。この機能より前に算定した記録は、通常の算定を実行すると基準別の値が後から付きます。

  3. Scope 分析で確認する

    Scope 分析の画面にある「Scope 2 算定基準別」のカードに、2 つの基準の合計と内訳が出ます。

02NEW

カスタム係数の変更履歴と、再算定するかの選択

自社で決めたカスタム係数(例:PPA で契約した電力の係数)を編集すると、これまでは値が上書きされ、変更前の値が残りませんでした。しかも算定済みの結果は算定したときの値のままなので、同じ年度の中に変更前と変更後の値で算定した結果が混ざっていました。

操作係数値・単位を変えて保存
確認この係数で算定済みのデータを数える

0 件ならそのまま保存

1 件以上
保存して再算定する

該当データを未算定に戻し、年度ごとに算定し直す

保存のみ

算定済みの結果は変更前の値のまま

どちらを選んでもDB のトリガーが変更履歴を残す:変更前 → 変更後の値と単位、係数名・年度、変更した人、日時
図解係数値・単位を変えて保存するときの流れ。履歴は画面の操作でも CSV 取込でも、DB のトリガーが記録します。
排出係数の編集モーダル。係数値を 0.000150 に変えて更新すると、この係数で算定済みのデータが 5 件あると表示され、戻る・保存のみ・保存して再算定する、の 3 つのボタンが並ぶ
算定済みのデータがあると、保存の前に件数を示して選んでもらいます。
係数の出典・算定式のモーダル。下部の「値の変更履歴」に 0.000180 t-CO2/kWh から 0.000150 t-CO2/kWh への変更が日付付きで表示されている
係数の詳細を開くと、値の変更履歴が日付付きで並びます。

STEPSカスタム係数の値を変える

  1. 係数管理で編集を開く

    「排出係数」の一覧で、カスタム係数の行の編集ボタン(鉛筆)を押します。

  2. 係数値を変えて「更新」を押す

    その係数で算定済みのデータがあれば、件数とともに「保存して再算定する」「保存のみ(算定済みの結果は変えない)」「戻る」が出ます。

  3. 再算定するかを選ぶ

    「保存して再算定する」を選ぶと、該当するデータを未算定に戻し、年度ごとに算定し直します。名称や出典だけを変えたときは確認は出ません。

03NEW

IDEA の版を、算定年度ごとに

IDEA は版が改訂されます。これまでは組織で有効な版が 1 つだけで、新しい版を取り込むと、年度を問わず未算定の明細が新しい版に付け替わっていました。過年度を当時の版で算定し続けることができず、取込の履歴を確かめる画面もありませんでした。

  1. 2023年度Ver.9.2有効な版を使う
  2. 2024年度Ver.9.1この年度に割り当て
  3. 2025年度Ver.9.2有効な版を使う
  4. 2026年度Ver.9.2有効な版を使う
  • 版を割り当てると、その年度の未算定の明細が、同じ製品コードの割り当てた版の製品に付け替わる
  • 割り当てた版に無い製品は「選び直しが必要」として件数を知らせる
  • 算定済みの明細は変わらない。年度の途中で版を切り替えることはしない
図解1 つの会計年度に 1 つの版を割り当てられます。割り当てていない年度は、これまでどおり有効な版を使います。
「IDEA の版と算定年度」のカード。2023〜2026 年度ごとに使う版を選ぶプルダウンが並び、2024 年度だけ Ver.9.1 を割り当てている。下に取込履歴の表がある
「IDEA の版と算定年度」のカード。年度ごとの版の選択と、取込の履歴(版・取込日・製品数・割り当て年度・算定での使用件数)が並びます。

STEPS年度に版を割り当てる

  1. 係数管理の「IDEA の版と算定年度」を開く

    取り込んだ IDEA の版の中から、算定年度ごとに使う版を選べます。

  2. 年度の「使う版」を選ぶ

    選んだ時点で、その年度の未算定の明細が、割り当てた版の同じ製品コードに付け替わります。付け替えた件数と、その版に製品が無く選び直しが必要な件数が通知されます。

  3. データ入力で確かめる

    IDEA の製品は、対象年月が属する年度に割り当てた版から検索されます。検索欄の下に、どの版から検索しているかが出ます。

データ入力の排出係数の参照欄。IDEA 製品の検索欄の下に「Ver.9.1 標準版(この年度に割り当てた版)から検索します」と表示されている
対象年月を 2024 年 6 月にすると、2024 年度に割り当てた版から製品を検索します(画面の IDEA はスクリーンショット用のダミーです)。

04HOW TO

過年度の公式排出係数を、自分たちで登録する

OpenGreenTrack のリポジトリに入っている公式排出係数は、公表資料がある最近の年度(現在は 2025 年度)だけです。基準年度など過年度の活動量を公式係数で算定したい導入先は、公表資料を入手して自分で登録します。これまでは年度を足すたびに生成スクリプトのコードを書き換える必要があり、OSS 側の更新を取り込むたびに衝突していました。

scripts/official-factors/data/

  • 2025/ OSS に収録
    • denki.txt・gas.tsv・heat.tsv・fuels.tsv・scope3.tsv
    • source.json 公表資料名・代替値・版
  • 2024/ 導入先が追加
    • 同じ 5 ファイル + source.json
generate.ts(コードは変えない)

supabase/seeds/production/

  • official_emission_factors_2025.sql 変わらない
  • official_emission_factors_2024.sql 増える
  • official_emission_factors_cleanup.sql 変わらない
図解年度ごとのデータと定義(source.json)を置くと、その年度の seed ファイルだけが増えます。ほかの年度のファイルは 1 バイトも変わりません。

STEPS過年度を seed として登録する

  1. 公表資料を入手する

    環境省・経済産業省の「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」の排出係数のページから、対象年度の電気・ガス・熱の事業者別排出係数と燃料の係数を、「排出原単位データベース」から Scope 3 の代表原単位を入手します。

  2. data/<年度>/ にファイルと source.json を置く

    scripts/official-factors/data/2025/ と同じ書式で 5 つのファイルを置き、source.json に公表資料名・代替値・版を書きます。

  3. 生成して投入する

    生成スクリプトを実行すると official_emission_factors_<年度>.sql ができます。稼働中のローカル DB へは npm run db:seed:production、クラウドへは npx supabase db push --include-seed で入れます。

2024 年度を追加する例
scripts/official-factors/data/2024/
  denki.txt  gas.tsv  heat.tsv  fuels.tsv  scope3.tsv  source.json

node scripts/official-factors/generate.ts
# → supabase/seeds/production/official_emission_factors_2024.sql が増える
npm run db:seed:production

05FIX

そのほかの修正

  • 公式係数の年度を更新したときに、過年度の係数が新年度の値で上書きされないよう、公表資料を年度別のディレクトリで管理するようにしました。
  • IDEA の取込が途中で止まっても「取込中」の表示から抜け出せるようにしました。画面が取込中を表示している間、10 分以上進んでいない取込を失敗に切り替え、もう一度取り込めるようにします。

06CHANGELOG

変更の一覧

  • 新機能・改善Scope 2 をロケーション基準・マーケット基準で区別して算定・表示#60
  • 新機能・改善IDEA の版を算定年度ごとに割り当て、取込履歴を確認できるように#104
  • 新機能・改善過年度の公式排出係数を、各導入先がコードを変えずに登録できるように#103
  • 新機能・改善カスタム係数の値の変更履歴を残し、変更時に算定済みデータを再算定するか選べるように#101
  • 修正IDEA 取込が中断されても「取込中」の表示から抜け出せるよう、画面から滞留した取込を回収#102
  • 修正公式係数の年度更新で過年度の係数が上書きされないよう、公表資料を年度別に管理#100

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